2/2日、母に頼まれて祖母のひっこしを手伝うことになった。
祖母は80だ。
40数年来住んだ古巣だと聞いた。
何でも近いうちに団地が取り壊されるらしい。
駅に着いた。
歩いて団地まで。
懐かしい。
何年振りだろうか。
都会の明るさとはうってかわった真っ暗な道をとぼとぼ歩いた。
人気のない団地について、懐かしい扉をノックしようとすると
「 大きくなったねー 」
叔母だった。
意外なほど小さい背中について家に入る。
ひっこしは明後日だというのに、家の中は少し散らかっているかなという程度だった。
お年寄り一人で引っ越しをするのはやっぱり無理がある。
小学生の頃の記憶がほんのりよみがえる。
謎のすだれ
変な匂いのする冷蔵庫
狭い通路・・・
その日は寝て、翌日から作業を始めた。
…なかなか進まない
流石に半世紀も住めば愛着も湧くというものなのだろうか
どれもこれも新居に持っていくと言う。
使い切れないような量の食器やら書類やらタオルやら…
ことに衣服に関しては服飾の仕事をやっていたたのもあってか、無尽蔵にあった。
どれもこれも思い出がつまっているのだと
でも叔母は新居にはそんなに持っていけないと知っているから捨てなさいという。
節分。鬼は外だが服も内だ。
申し訳ない
途中から叔母も手伝ってくれて3人で作業をすることになった
ところが母と娘の気安さなのかどうにも叔母の言葉がとげとげしい。
物を捨てるのも問答無用だし、祖母が要らないと言ったものも持っていくべきだと語気が強い。
ひっこし屋さんが来るのに時間がないという危機感のない祖母とこれから夜勤のある叔母
家の隅々まで思い出が染み付いている祖母とそこまでではない叔母(と言っても20数年生まれ育った家のはずだけれど)
どうもこの違いが理由のようだ
会話が叔母一方向でなんとなく気まずい。
ひっこしは無事終わった。
一番意外だったのは祖母が想像以上に衰えていたことだった。
小学生の頃は飛び蹴りされてもちょっとよろけるぐらいだった祖母が(それでも当時すごく怒られた)、今飛び蹴りしようものなら間違いなく骨折じゃ済まない。
新居に移って一息ついて、祖母がぽつり
「申し訳ないねぇ」
みたいなことを言っていた。
新しく建てられたアパートで最初に最期を迎えることを気にしているようだった。
このタイミングで団地が取り壊されるのもお年寄りが減って騒ぐ人が少なくなったからっていうのもあるのだろうけれど、
40年住んだ家が取り壊されても先がそこまで長くないことがわかっていたら、それはやっぱり引っ越しなんてしたくない。
祖母は死を直視していた。
自分にはあまりに無縁な感覚すぎて居心地がわるかった。